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「財政破綻」なんて起こらない:中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義第1回

中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義

 

 そこで、次の図をご覧ください。

 

※経済評論家三橋貴明氏作成・提供

 

 この棒グラフを見れば一目瞭然ですが、日本は政府債務が累積し続けています。もっとも、政府債務が累積し続けるというのは、べつに日本に限った話ではありません。

 「日本は政府債務がずっと積み上がって、このままだと破綻する」というようなことが20年前から言われてきました。しかし、「このままでは破綻する」ような状態では金利が上がっていく、あるいは通貨が信認を失って価値が下がる、つまりインフレ率が高くなるはずなんですけれど、先ほどの図をご覧いただけば分かるように、現実には「関係ない」どころか逆相関になっていて、政府債務が累積すればするほど金利が下がっているんです。

 財政破綻ということは「金利が上がる」ということなのに、実際には「金利が下がっている」。だとしたら、日本の政府債務は多すぎるんじゃなくて、「少なすぎる」と考えるべきではないでしょうか? またインフレ率も、消費税の増税になった時だけは、これは増税分だけ見かけ上は上がっていますが、その後すぐに下がっていますね。

 日本の「金利」と「物価」は、この20年間ずっと世界最低水準で来ているわけです。

 

 そこに来てさらに2020年は、コロナに伴う経済対策で財政赤字を拡大せざるを得なかったわけですから、「プライマリーバランスの黒字化」という目標を立てていたにもかかわらず、以下の図から分かるとおり、実際のプライマリーバランスは90兆円の赤字になりました。

 

※経済評論家三橋貴明氏作成・提供

 

 赤字を減らさなきゃいけない、黒字化するんだと言って必死になってきたのに、90兆円の赤字になってしまった。これは大変だ、いよいよ金利暴騰、ハイパーインフレだ……と思ったら、蓋を開けてみると2020年度、インフレ率と金利はむしろ下がりました。

 「これ以上財政赤字が拡大すると金利が暴騰する」とか「インフレが止まらなくなる」とかずっと言っていたのに、2020年度はコロナのせいで「プライマリーバランスの90兆円の赤字」という実験をやらざるを得なかった。そうしたら実際には金利と物価が下がったんですね。

 言葉は汚いですが、「そろそろいい加減にしてもらえませんか?」と言いたくなりますね。

 

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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